契約期間の途中でテナントが撤退


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●3年の賃貸借契約期間が終了する前に中途解約の申し入れ
 Fさんは自分の土地に建物を建設し、外食店に賃貸していましたが、賃貸借契約期間3年が満了する半年前、業績不振を理由に「契約更新はしない」との申し入れを受けました。最近、こうしたテナントの撤退で困っているオーナーが増えています。
 Fさんは契約解約に伴う新たな負担が生じないか不安になり、早く次のテナントを探さなければなりませんでした。
 どうして、このような事態になったのでしょうか。最大の原因は賃貸借期間を3年という短期にしたことです。テナントの担当者から口答で、「会社の規定で契約は3年ですが、10年でも20年でも借りますよ」という話もあったそうです。当然、Fさんは、更新されると思い
込んでいたのです。しかしながら契約上、賃貸借期間の満了ということで、テナントにペナルティを課すことはできません。
 次の手段としては、一刻も早く次のテナントを見つけることしかありません。このとき、解約と閉店は別の問題であることを理解してください。次のテナントを探すためにも、閉店時期を明確にしてもらう必要があります。閉店時期に合わせて、次のテナントを探す期間が稼げるのです。

●71社リストアップし、最終候補を4社に絞る
 まず、立地に合った外食店をチェーン展開している会社を七一社リストアップしました。さらに、それぞれの会社の業績や店舗展開の取り組み姿勢を評価して、物件紹介をする会社を39社に絞り込みました。業種は洋食レストラン、和食レストラン、中華レストラン、回転寿司店、焼き肉レストラン、ステーキ(ウス、イタリアンレストラン、とんかつ屋、ちゃんこ屋、居酒屋、お好み焼き屋と多岐にわたります。
 39社すべてに、Fさんの希望賃料月額100万円以上、物件の概要を提示して、物件に興味があるか、出店を検討するかの回答をもらいます。もちろん、すぐに出店を決めるテナントはありません。物件に興味を持ったテナント会社は店舗出店担当者が物件と立地を確認します。
 その結果、「今年度の出店計画は完了した」、「駐車スペースが足りない」、「規模が大きすぎる」といった理由で出店を断る会社も出てきます。
 出店に積極的な姿勢をみせ、希望賃料、希望敷金を提示してきた4社を”候補テナント”として、具体的な交渉に入りました。4社のなかから一番有利な条件を出してきた会社を選べばいいわけですが、これは簡単なことではありません。それぞれの会社が提示した希望賃貸条件はバラバラで、単純な比較ができないからです。会社の信用度、将来性を加えた”総合評価”をする必要があります。

●中途解約のリスク回避策をつねに持っておく
 同じ失敗を繰り返さないよう、特に中途解約のリスクを避ける契約に注力しました。
 店舗などに賃貸するときは契約期間を建物建設費の返済期間に合わせることが原則で、契約期間満了時には借入金がなくなっているようにすることが基本です。そのうえで、契約期間中の中途解約はテナント側に重いペナルティを課し、中途解約するとテナントに損になる、中途解約されてもオーナーには負担が生じないという契
約内容にすることです。
 もう一つ、留意することがあります。テナントが中途解約を申し立ててきたときは、すぐに「契約通りの事前通告ですから、仕方がありません」と了承しないことです。まず、「待ってほしい」と契約解除を了承しないことを、テナントに通告する必要があります。交渉によって3ヵ月でも6ヵ月でも退去が延びれば、賃料を下げざるを得なくなっても、新しいテナントを探す時間に余裕が生まれます。ケースによっては、テナントの本音は「賃料を下げれば、契約を更新してもいい」というところにあるかもしれませんから、話し合いの余地はあります。

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●条件比較のポイント
 中途解約のときのペナルティ条項以外の条件比較のポイントは賃料、改装費用、契約期間、賃料改定になります。
 もちろん、賃料は高いほどいいわけですが、ほかの条件とのバランスが総合判断になります。
Fさんは4社のうち、最終的にB社に決めました。その理由は、次の通りです。

 ①A社は賃料が月100万円、敷金600万円と4社のなかで一番安い。契約期間も10年と短く、賃料改定が3年ごとで、賃料値下げが頻繁に要求される可能性がある。
 ②B社は改装費がオーナー負担になるが月額賃料は130万円、敷金は1300万円を提示し、賃料改定が五年と安定収入が見込まれる。また、会社に勢いがあり、業績もいいことから、中途解約や契約期間中の賃料値下げ要求が出てくるリスクが少ないと考えられる。さらに、中途解約の場合の敷金の放棄だけでなく、違約金を払うことも条件として受け入れてくれた。
 ③C社も改装費はオーナー負担になり、月賃料はB社と同額、敷金2600万円を提示し、数字のうえでは一番有利になっているが、中途解約のペナルティには難色を示すだけでなく、業績にかげりがある。
 ④D社は改装費の建築協力金として2500万円、月賃料134万円を提示しているが、協力金返済後の実質手取り賃料は月120万円程度になる。また、賃料改定も3年と短いうえに、中途解約のペナルティも受け入れられなかった。

【中途解約のペナルティ条件】
 中途解約のとき、テナントにはどういうペナルティを課せばいいのでしょうか。
 どうしても中途解約するという場合、金銭的には入居時にオーナーが受け取った保証金の処理と、オーナーが受けた損害の補償があります。このとき、賃貸惜契約書のなかの、「期間内中途解約」の項目に、次の内容があるかどうかがポイントになります。
 ①契約期間内に乙(借り手)の一方的な都合により、中途解約をする場合、乙は、いままでの契約と同様か、それ以上の条件で建物を借りる第三者を甲(貸し手)に紹介し、その第三者と甲が賃貸借契約をしたとき、あるいは乙が保証金(敷金)を全額放棄したときは、乙は契約を即時解約できる。
 つまり、撤退したいテナントがいままでと同じか、今まで以上の条件で借りてくれるところを探して、そこと交渉がまとまったとき、あるいはテナントが「保証金および敷金を返してくれなくてもいい」と言えば、すぐに解約できるということです。
 ②契約期間満了前に解約をするときは、解約日から契約完了期間までの賃料を一括して支払うことにより解約することができる。
 これは契約満了日までの賃料をテナントに補償してもらうことで、オーナーのリスクは大きく軽減します。
 契約書に、①、②の二項目があれば、テナントから「契約期間途中で解約したい」と申し出があっても、金銭的な損失は起こりません。こうした契約項目がないときは、すべて話し合いになるので、契約期間中の賃料がもらえなかったり、敷金の返金を要求されたりと、オーナーにとって不利な結果になることもあります。
 次に、退去後の原状回復があります。
 事業不振や倒産で店を閉鎖するとき、店から人だけがいなくなった状態で放置されることがあります。そうした場合、後始末はオーナーが負担しなければなりませんから、これも契約書で、「退去時にテナントの責任で原状回復をする」ことを明記しておく必要があります。そして、原状回復に関する「合意書」をとり交わすことです。
 こうした交渉は、オーナー自身よりも、交渉力がある専門家に任せることをお勧めします。